第5章:量子テレポーテーションの考え方、2つの方式

5.1 量子状態の転送とコピー禁止定理のトレードオフ

古典的なボールのコピーを試みる場合、ボールの位置と運動量を正確に測定し、その測定結果に基づいて別のボールを同じ状態にセットすればよい。しかし量子システムにおいては、以下の物理的な基本定理および制限が存在するため、この単純なコピー手法は不可能となる。

  1. コピー禁止定理(no-cloning theorem):元の状態を保持したまま、その状態の完全なコピーを確実に作製することは権利的に不可能である。
  2. 1回限りの測定制限:量子状態は確率分布を与えるものであり、1回の量子測定のみでは状態そのものを完全に手に入れることはできない。
  3. 局所相関の破壊:同じ状態を複数個用意できたとしても、非局所的なもつれを持つ一部のシステムを個別に測定することは相関(もつれ)を破壊してしまう。

これらの制限を克服し、元の量子状態を一切破壊・測定することなく、かつコピーを作ることなく「状態そのものを離れた別の場所に確実に送り届ける」プロトコルが、量子もつれを利用した量子テレポーテーションである。

5.2 量子情報処理における2つの主要なエンコード方式

光を用いた量子テレポーテーションには、情報の表現方法(エンコード)によって大きく以下の2種類が存在する。

1. 量子ビット(離散量)方式:情報を、光子の偏光状態(縦変更・横変更など)やタイムビン(Time-bin、光子がどの時間スリットに存在するかというスロット)などの離散的な2準位系にマップする方式。

2. 連続量(CV)方式:情報を、電磁場の直交位相振幅(サイン・コサイン成分、x や p)などの連続的な無限次元の状態空間にマップし、波動関数そのものを情報媒体とする方式。

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