第4章:光の量子化、ホモダイン測定
4.1 電磁場の量子化と調和振動子ハミルトニアン
古典的な電磁場を量子化するためには、電場や磁場のベクトルを演算子に置き換え、それらが古典電磁気学のマクスウェル方程式を満たすことを要請する。解析力学に基づく詳細な電磁場の量子化プロセスは時間の都合上割愛するが、結果として、電場演算子 は消滅演算子 および生成演算子 を用いて以下のように書き表される。
ここで生成・消滅演算子は、ボソン粒子の交換関係を満たす。
各モードのエネルギーを表すハミルトニアン は、生成・消滅演算子を用いて量子的な調和振動子の形式に書き直される。
この式から分かるように、量子光学において光とは「量子的な調和振動子の集合体」として記述される。数演算子 = の固有状態 は光子の数を表し、 および は光子数を1つ減らす、あるいは増やす作用を持つ。
光子数 0 の状態 は、エネルギーの最低状態(基底状態)であり「真空状態」と呼ばれる。
4.2 直交位相振幅の定義と交換関係
光を波動として捉える場合、電場のサインおよびコサイン成分に対応する物理量として「直交位相振幅(Quadrature)」を定義する。消滅・生成演算子を用いて、位置に相当する および運動量に相当する は以下のように定義される。
これら直交位相振幅の交換関係は、ボソンの交換関係からただちに位置と運動量の交換関係と一致する。
すなわち、光の電磁場の実部と虚部は、まさに量子力学的な位置と運動量そのものとして振る舞い、連続量の量子情報処理における状態空間を構成する。
4.3 ホモダイン測定の動作原理と利点
光の直交位相振幅 や を測定する極めて強力な手法が「ホモダイン測定」である。測定したい微弱なシグナル光(インプット、演算子 )と、同一波長で非常に強度の強いレーザー光であるローカルオシレーター(LO、複素振幅 、位相 φ)を、50:50のビームスプリッターで干渉させる。干渉後の出力光モードは、ビームスプリッター変換により以下のようになる。
干渉後の2つの出力をフォトダイオードで受光し、それぞれの光子数の差分を測定する。差分電流演算子 は以下のように定義される。
LOが十分に強く、古典的な振幅 A と位相 φ を持つ()とみなせる極限において、これを計算すると以下の結果が得られる。
この式から、ホモダイン測定には増幅作用、モード選択性、測定位相の古典的制御の3つの利点がある。