周波数安定化He-Neレーザーの用途・利用事例
ヘリウムネオン(He-Ne)レーザーは、優れた単色性、干渉性、指向性を持ち、高い精度、安定性、ビーム品質が求められる分野で活用されています。
| 目的 | 用途 | 利用する光の性質 |
|---|---|---|
| 測る | 長さ・距離の測長、形状の測定 | 干渉性 |
| 振動・速度の変位量測定 | ドップラー効果 | |
| 診る | 分光による成分分析 | 波長の変化 |
| 定める | アライメント・ガイド光 | 指向性 |
| 校正・品質保証 | 安定性 |
【測る】寸法や動きを極めて精密に捉える
1. 長さ・距離の測長、形状の測定(干渉性の活用)
He-Neレーザーの干渉しやすさを活かし、各種干渉計のレーザー光源として、光の波長を「ナノメートル単位の超精密なものさし」として利用します。スマートフォン用レンズの形状測定や、半導体材料の平坦度測定、さらには半導体露光装置における超精密ステージの位置決め制御など、静的な寸法や絶対的な位置の確定に不可欠な光源です。
レーザーを光源に用いる干渉計の代表的な構成として、「フィゾー干渉計」が挙げられます(図1)。基準となる面(参照面)と、測定したい面(被検物)から反射したレーザー光を重ね合わせて干渉縞(かんしょうじま)を作り出し、その縞模様から対象物のわずかな凹凸や歪みを高精度に読み取る仕組みです。この測定には、波長が極めて安定しているHe-Neレーザーの特性が最大限に生かされています。
図1:フィゾー干渉計の構成と測定原理
2. 振動・速度の変位量測定(ドップラー効果の活用)
レーザー光が動く物体に当たって戻る際のわずかな周波数変化(ドップラー効果)を高感度で検出します。レーザードップラー振動計(LDV)の光源として、回転体のブレやスピーカーの振動など、物体の動的な動きや速度を非接触でリアルタイムに解析する「スピードガン」のような役割を果たします。
代表的な応用装置であるレーザードップラー振動計(LDV)では、内部でレーザー光を「測定光」と「参照光」に分け、動いている対象物から反射してきた測定光を参照光と重ね合わせて干渉させます(図2)。このときに生じる微小な周波数のズレ(ドップラーシフト)から速度や変位を正確に割り出すため、基準となる光源(He-Neレーザー)の周波数が極めて安定していることが絶対条件となります。
図2:レーザードップラー振動計(LDV)の構成と測定原理
【診る】物質の成分や見えない内部状態を検査する
3. 分光による成分分析および内部応力の検査
物質にレーザーを照射し、散乱した光の波長変化から分子構造を特定するラマン分光分析などの光源として利用されます(図3)。また、透明なガラス基板や機能性フィルムの内部に潜む「見えない歪み(ストレス)」を光の位相差として検出する「複屈折計測」にも活躍します。これにより、製品や材料の性能悪化や不具合を防ぐ「鑑定ライト」として機能します。
成分分析の代表的な手法である「ラマン分光分析」では、サンプルにレーザー光を照射し、そこから生じる非常に微弱な散乱光(ラマン散乱光)を分光器で検出してスペクトルを得ます(図3)。得られたスペクトルのピーク位置から物質の分子構造や状態を特定するため、ノイズが少なく波長(周波数)が単一で変動しないHe-Neレーザーが、精度の高い励起光源として重宝されています。
図3:ラマン分光分析の仕組み
【定める】すべての基準となり、正しい位置へ導く
4. アライメント・ガイド光(指向性の活用)
光が広がらず真っ直ぐ進む性質(指向性)を活かし、絶対に曲がらない「光の直定規」として機能します。工作機械の芯出しや、精密な位置合わせが求められる現場で確実なガイドラインを提供します。また、指向性を活用することで、遠方への無線光伝送などの次世代技術への利用検討も行われています。
5. 校正・品質保証(安定性の活用)
周波数安定化He-Neレーザー最大の強みである「発振波長が極めて安定している」性質を利用し、他の機器が正しいかを判定する「絶対的な基準」として機能します。工作機械の精度検査(キャリブレーション)や、計測機器メーカーにおける国家標準クラスの校正用光源として、マスター(原器)の役割を担います。
関連情報
