超高分解能OCT用の広帯域光源
現状の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の分解能は10µm程度であるが、毛細血管や視細胞のイメージングには数µmからサブミクロンの空間分解能をもつOCTが必要となる。OCTの分解能と光源の関係を簡単に表すと下式のようになる(OCTの原理についてはまた今度更新する)。

上式ではスペクトル形状をガウス型と仮定しており、λ0はスペクトルの中心波長、⊿λはスペクトル幅である。式より光源のスペクトルが短波長で広帯域であるほどOCTの分解能が高くなることが分かる。
広帯域光源を用いた、分解能が数µmのOCTを超高分解能OCT(UHR-OCT:Ultra-highresolution OCT)と呼ぶ。分解能は中心波長の2乗に比例して分解能が低くなるが,中心波長は生体への光の侵入深度を考慮して決定される。一般的に眼底検査用のOCTの光源の波長帯域には水の吸収の極小が存在する0.8µm帯の光が用いられる。
またOCTの干渉波形と光源のスペクトルにはフーリエ変換の関係にあるのでスペクトル波形はガウス型であることが望ましい。そのため、これまでOCTの光源としてガウス型スペクトルをもつSLDが用いられてきた。
最近ではフーリエドメインOCT(FD-OCT)の一種の波長走査型OCT(SS-OCT:Swept-source OCT)用に高速波長掃引光源(高速波長可変レーザー)が注目されている。SS-OCTではリアルタイム3次元イメージングが可能だが、光源の広帯域化はまだ実現されていないためイメージの分解能は高くない。
各種広帯域光源の比較
表1に0.8µm帯のUHR-OCT用の広帯域光源として報告された,ハロゲンランプ,チタンサファイアレーザ,スーパーコンティニューム(SC:supercontinuum)光の特徴をまとめた。
| 広帯域光源 | スペクトル幅 | 光強度 |
|---|---|---|
| ハロゲンランプ | ~460nm | 低 |
| チタンサファイアレーザー | ~260nm | 高 |
| スーパーコンティニューム光 | ~325nm | 高 |
- ハロゲンランプをOCTの光源として光軸方向分解能1.1,0.8µmが得られ、豚皮のUHR-OCTイメージングがなされている[1,2]。ハロゲンランプはスペクトル幅は広いが空間コヒーレンスが悪く集光が必要である。さらに光源そのものの光強度が弱いため高感度なOCTを構築できない。
- チタンサファイアレーザはUHR-OCTの光源用いられる報告は多く、人眼の網膜と角膜の超高分解能イメージも報告されている[3,4]。スペクトル幅が100nmを超えるチタンサファイアレーザはパルスの時間幅が10fsを切る。このようなチタンサファイアレーザは光学系が精密に設計されており、自身の結晶が持つ熱等の外乱に非常に弱く取り扱いが困難である。
またスペクトル波形は結晶に依存するため比較的ガウス型に近いスペクトル波形を得るためにフィルタが必要であり、雑音が増加してしまう。 - フェムト秒レーザー光でPCFを励起し中心波長0.7µm帯でスペクトル幅325nm、光軸方向分解能0.75µmのサブミクロンUHR-OCTが実現されている[5]。SC光は超短パルスを光源とするが,パルス幅は100fs程度でも生成することができる。将来ファイバレーザーベース化することで超高分解能OCTの実用化を実現することが期待されている。
OCT用光源としてのスーパーコンティニューム光
SC光は超短パルスをファイバに入射することで生成できるが、使用するファイバによってSC光の特徴は異なる。表2に各種ファイバとそのファイバを用いて生成されるSC光の特徴を示す。比較するのはフォトニッククリスタルファイバ(PCF : Photonic Crystal Fiber)、高NAファイバ、シングルモードファイバ(SMF:Signle Mode Fiber)で生成するSC光である。
| ファイバ | スペクトル幅 | スペクトル波形 (ガウスor sech2) |
雑音 | スペクトルの 安定度 |
|---|---|---|---|---|
| PCF | 非常に広い | × | 高 | △ |
| 高NAファイバ | 広い | △ | 低 | × |
| SMF | 広い | ○ | 低 | ○ |
- PCFで生成する,スペクトル幅が1µmに及ぶ広帯域なSC光のスペクトル波形は矩形となる。更にはその生成方法に由来する微細構造があり、雑音は高い。またスペクトル波形は入射光強度とファイバへのパルスの結合率に大きく依存し安定とはいえない。
- 高NAファイバで生成されたSC光はファイバ端面の劣化により、時間とともにスペクトルが劣化する(微細構造が現れる)という重大な欠点がある[7,8]。
- SMFで生成したSC光はスペクトル幅はPCFで生成したものに及ばないが、その他の特性は良好で、UHR-OCTの光源としては最も有効な光源であると考えられる。これまでに光軸方向分解能3.7µmのUHR-OCTが実現されている[9]。
幣社の技術
幣社では、Ti:Sapphireとシングルモードファイバを用い、830nm帯でスペクトル幅140nmを超えるガウス型スーパーコンティニューム光を生成することができます。この研究に関する詳細は「In vivo Ultrahigh-Resolution Ophthalmic Optical Coherence Tomography Using Gaussian-Shaped Supercontinuum」を参照していただくか、幣社まで直接お問い合わせください。
参考文献
- [1]M.Ohmi,andM.Haruna,Opt.Rev.10,478,(2003)
- [2]M.Ohmi,andMHaruna,レーザー研究,34,(2006)
- [3]W.Drexler,U.Morgner,R.K.Ghanta,F.X.Kartner,J.S.Schuman,andJ.G.Fujimoto,
Naturemedicine,7,502-507,(2001) - [4]M.Wojtkowski,V.J.Srinivasan,T.H.Ko,J.G.Fujimoto,A.Kowalczyk,andJ.S.Duker,
Opt.Exp.12,2404-2422,(2004) - [5]B.Povazay,K.Bizheva,A.Unterhuber,B.Hermann,H.Sattmann,A.F.Fercher,andW.Drexler,
Opt.Lett.27,1800-1802,(2002) - [6]N.Nishizawa,A.D.Aguirre,J.G.Fujimoto,Proc.ofSPIE,6102,61020H,(2006)
- [7]D.L.Marks,A.L.Oldenburg,andJ.J.Reynolds,Opt.Lett.27,2010-2012,(2002)
- [8]H.T.Daniel,L.Marks,Y.L.Koh,S.A.Boppart,Opt.Lett.32,2037-2039(2007)
- [9]Y.Wang,I.Tomov,J.S.Nelson,andZ.Chen,J.Opt.Soc.Am.A,22,1492-1499,(2005)
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