光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の概要
1.医療における眼底イメージング機器の役割
眼球は光を受容する器官であり、外界からの光が効率よく眼内に入り網膜に達するように作られている。したがって他の器官よりも容易に眼内,特に網膜の状態を直接に観察・画像化することができることから光を使ったさまざまな診断機器が開発されている。その代表が光コヒーレンストモグラフィ(OCT:Optical Coherence Tomography)である。
OCTは低コヒーレンス光干渉をベースとする断層光イメージング技術であり、簡便な光学系で容易にミクロンオーダーの空間分解能をもつ断層イメージを得ることができる。OCT の登場はそれまで観測できなかった網膜断層像を非侵襲に描出し、眼底疾患学に革命をもたらした。図1 は一般的なOCTの網膜黄斑部の断層像である(疑似カラー表示)。

図1.1網膜のOCT画像
OCTは主に眼球の奥の網膜や脈絡膜、血管・視神経の出入り口を観察することで網膜剥離、視神経疾患、糖尿病生網膜剥離などを診断する装置であるが最近では前眼房の断層像も注目を集めている。例えば緑内障は前眼部の虹彩を観察することで予診することができる。
さらに,次世代の眼底検査用OCTでは生活習慣病の早期発見・予防ができる可能性がある。眼底血管は外から直接見る事のできる唯一の血管である。眼底血管とその周辺組織の形態と代謝機能を細胞レベルで観察・計測することで脳梗塞、糖尿病、高血圧、動脈硬化を診断することができる。また、眼底の動脈からは採血による血液検査では得られない生体代謝情報が得られる可能性がある。
断層計測法におけるOCT の位置づけ
現在臨床で活用されている断層計測法にはX線CT、MRI、超音波CT、OCT等がある。図1.2 に断層計測法におけるOCT の位置付けを示す。横軸は深度、縦軸は分解能である。また、表1.1にはそれぞれの装置の深度と分解能以外の特徴をまとめた。

図1.2 断層計測法におけるOCTの位置づけ
| 項目 | 観察原理 | 時間分解能 | 安全性 | コスト |
|---|---|---|---|---|
| X線CT | X線透過率 | 約10秒 | × | ~数億円 |
| MRI | 核磁気 | 数10秒 | ○ | ~数億円 |
| 超音波CT | 超音波の反射率 | 秒 | ○ | ~数千万円 |
| OCT | 光の屈折率 | 1秒以下 | ○ | ~数千万円 |
現在医療現場で使用されている一般的なOCT の光源は波長0.8μm帯のスーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)で、光ファイバカプラーを用いて干渉計が構成されている。現在日本で普及しているOCTの画像の光軸方向(生体の深さ方向)の空間分解能は約10μm で、表皮下における光到達深度は~2mm、S/N は60~80dBである。最新のOCTではリアルタイムイメージングが可能である。
OCTの光源は近赤外光なので生体と非接触で侵襲もないため安全である。X線CTやMRI のような大掛かりな装置ではなく安価であり、装置の大きさも机上に載る程にコンパクトである。これらの特徴からOCTは既に眼下臨床では必要不可欠な装置となっており、医療現場ではさらなる高分解能化・高感度化・高画質化が求められている。また皮膚科、消化器外科、循環器系などの多くの臨床分野でOCTが検討され工業応用への可能性も示されている。
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