モード同期ファイバーレーザーの共振器構成
共振器内のGVD が完全に補償されたとき、パルス光に含まれる各周波数成分は全て同位相となるため、時間的に最短パルスを示すフーリエ変換限界パルス(TLP: Transform-Limited Pulse)が得られる。光パルスの時間強度波形とスペクトル形状は互いにフーリエ共役の関係にあり、パルス幅Δtとスペクトル幅Δν (周波数領域)の間には下式の不確定性関係が成立する。
![]()
ここでパルス幅Δt 、スペクトル幅Δν は共に半値全幅(FWHM: Full Width Half Maximum)を示す。k はスペクトルの分布関数に依存し、ガウス型の場合は0.441、sech2 型の場合は0.315 である。
フーリエ限界パルス幅
ガウス型の場合のフーリエ変換限界パルス幅と、波長領域でのスペクトル幅(バンド幅)の関係を下図に示す。
バンド幅は、波長1025 nm を固定として1025 nm から長波長側への波長幅とした。波長1025 nm ~ 1085 nm のバンド幅60 nm のスペクトルを有するとき、最短で27 fs の光パルスが期待できることが分かる。次にモード同期Erファイバーレーザーとモード同期Ybファイバーレーザーについて解説する。
モード同期Erファイバーレーザー
シンプルな構成
Er添加ファイバーは幅広い利得を有する。利得のピークはファイバーのコア成分、反転分布レベル、ファイバー長、添加量、共振器損失によって多少変わるが、大体1535 nmか1550 nmになる。
最もシンプルなEr添加フェムト秒ファイバーレーザーの構成を図1に示す[1]。このリニア型共振器は半導体可飽和吸収ミラー(SESAM)をモードロッ カーとして用いており、共振器は4%のフレネル反射とSESAMで構成されている。Er添加ファイバーは低パワーの半導体レーザー( LD )によって WDMカプラーを介して励起される。パルスの繰り返し周波数はファイバー長によって決まり、ここで得られる数100fsのパルス幅は分散特性、非線形特 性、利得特性によって決められる。
図1 :リニア型モードロックファイバーレーザー
非線形増幅ファイバーループミラー
モード同期ファイバーレーザーでよく使われてきた8字型共振器を図2に示す[2]。右側のリング共振器は利得のある非線形増幅ファイバーループミラーとして機能する。
左側の共振器からくる光はループミラー上で二手に分かれる。時計回りに伝搬する光はまずは低パワーの状態で長いファイバーを通過しErファイバーで増幅される。また反時計回りに伝搬する光はまずは増幅され、それから長いファイバーにより非線形位相シフトを受ける。非線形位相シフトの差がπである場合、その二つの成分は中心にあるカプラーで干渉し、共振器の下側に全光が伝搬する。上側に伝搬する光はファラデーアイソレータによって除去される。低パワーのときはループの透過率は比較的小さく一周における利得は小さ いが、高パワーのとき(理想的にはパルスのピークパワー付近)には非常に大きくなる。この構成は可飽和吸収体のように働き単一パルスを生成する。
8字型レーザの多くの場合、ソ リトン動作によりクリアなパルス形状になるが、パルス幅が短くなると非線形光学効果が強くなりすぎるために、パルスエネルギー、ピークパワーが制限され る。一般的なパルス幅は1ps、平均出力は数mWである。分散調整により高エネルギー化は可能となり、1 nJを超える高エネルギーな構成[3]、50 fs以下の構成[4]もある。

図2 :8字型モードロックファイバーレーザー
非線形偏波回転
非線形増幅ファイバーループミラーに加えて人工的な可飽和吸収体も存在する。非線形偏波回転、光強度に依存する偏光依存性は光強度に依存する偏光素子の透過率として考えることができる。この原理に基づいたリング型レーザーを図3に示す。バルク型レーザーのカーレンズモードロックに類似した技術であるが、 温度の変化によってファイバー中の偏波が変わることが問題視される。この問題は偏波保持ファイバーとファラデーローテータを用いことにより解決可能である[5]。温度に起因する偏光の変化が相殺されるため、環境的に安定なレーザーとなり得るが全ファイバー型で構成することが難しく、不安定要因にもなる。

図3 :リング型モードロックファイバーレーザー
モード同期Ybファイバーレーザー
Yb添加ファイバーに基づいたモードロックファイバーレーザーの波長帯は1000 ~ 1100 nmである。Er添加ファイバーレーザーとの違いは波長1 um帯の場合、通常シリカガラスファイバーの分散が正常分散の領域にあることだ。そのためフェムト秒パルスの生成にはバルク型の回折格子対などの異常分散を作りだす媒質が必要である。また波長1 um帯における異常分散ファイバーとして、フォトニック結晶ファイバー(PCF)が挙げられる。
高繰返し化
電気通信などいくつかのアプリケーションとして数GHzというパルス列の高繰り返し化が必要とされる場合がある。基本的なモードロックは共振器1周で1 パルス生成される。
ファイバーレーザーの共振器はファイバー長が長くなってしまうために繰り返し周波数に制限がかかってしまう。そこでハーモニックモードロックが必要とされる場合もある。ハーモニックモードロックでは共振器を1周する間に数100、数1000パルスを生成する。しかし、これは複雑なレーザー構成によりレーザーの不安定要素にもなる。
1μm付近の分散補償
超短パルス光を発生させるためのモードロック技術は、パルス動作を安定に生成するための効果的な可飽和吸収体が必要であると同時に、波長1.0 μm 帯においては、レーザー共振器内の群速度分散(GVD: Group Velocity Dispersion)の補償が必要である。シリカガラスファイバーのGVD は波長1.0 μm 付近では正の値(正常分散)を示す一方、1.5 μm 付近では負の値(異常分散)を示す。波長1.0 μm 帯における共振器内の分散補償には、回折格子対やプリズム対が用いられることが多い。
参考文献
レーザー探しの無料代行も致します。発振器の分類や波長やパルス幅などの仕様と合わせてお気軽にご相談下さい。










